湊かなえ「告白」を読んで

湊かなえ作の「告白」を読んでの感想や紹介等を記す。

 

この作品は2008年に単行本出版され、本屋大賞等の賞を獲得し、コミック版や映画として全国ロードショーされるなどした作品である。

この作家の作品で他にも「少女」や「贖罪」など5作品ほど映画化されている。

 

 

まず、この作品のあらすじだが、とある学校の敷地内部でそこに勤める教師の子供が亡くなってしまい事故死と断定される。そして作品の冒頭、第一章で本のタイトル通りその教師による告白が始まる。という内容だ。この作品は章で分かれていて各章ごとに視点主(語り部)が異なり、様々な立場からの主観的な目線や思考、つまり何を思いどう行動し何を感じたかを子細に書かれる。客観的に、あるいは常識的に見れば間違っている事自分に都合の良い解釈等もすんなりと書き語られている。

 

 

第一章では前記の通り教師の告白である。彼女の子供が死んだこと、シングルマザーの理由、夫の話、そして事件の真相とそれに関わる復讐について書かれている。

第一章として舞台設定や事件や人間関係等について書かれていて何気ないようなものも後の伏線が張られていたり視点主の人間性が分かるようになっていたりと細部にまで拘っているなと感じた。

 

第二章はその教師の教え子による告白後のクラス内や人間関係について語られている。教師が変わり、告白や復讐を引き金に始まったいじめや人間関係の変化その顛末について記されている。

 

第三章では犯人の内の一人の身内による犯人とその母親の告白後について日記調で犯人の母親視点で語られている。第二章の一部の裏側、種明かしと感じた。

 

第四章では第三章の犯人の内の一人の視点で告白前、そして事件が起こる前から起こるまでや告白後についての顛末が語られている。この章は特に章に分かれ語り部の視点になっている事が機能しているなと感じた。

 

第五章では犯人の残り一人で首謀者である人物の視点で語られている。この章は視点主の生まれから動機や第二章などの後のことがまとめて語られている。物語のある意味締めへ向かい第六章で全て占められる。

 

この作品を読んでの最初の感想はあまりすっきりしない終わりということだ。不可解なこともないしきっちりと占められているがこの気持ちを持つのは個人の嗜好、つまりは嫌な思いをしたというわけではないが後味が悪いような終わりであったからだと思った。

作品の出来は非常に良いというのが僕の感想で紹介である。